溶射加工の種類と特徴比較

2026.02.24

技術コラム

  • #溶射加工製品

溶射加工の種類と特徴比較

溶射加工は、金属やセラミックスなどの材料を皮膜として形成し、部品の耐摩耗性や耐熱性、耐腐食性を向上させる表面処理技術です。
航空機部品や産業機械、発電設備など幅広い分野で活用されており、用途に応じて複数の溶射方法が使い分けられています。
本記事では、代表的な溶射法であるフレーム溶射・プラズマ溶射・電気アーク溶射の特徴と、それぞれのメリット・デメリットを分かりやすく解説します。

溶射加工の仕組みと特性

溶射加工は、金属やセラミックスなどの材料を高温で溶融または半溶融状態にし、ガスや電気エネルギーを使って微粒子化し、基材表面に高速で吹き付けて皮膜を形成する表面処理技術です。
摩耗、腐食、耐熱性の向上などを目的に、航空機部品、産業機械、発電設備など幅広い分野で利用されています。

主な特性は以下の通りです。
・溶射温度は高いが、基材は大きな熱影響を受けにくい
・厚膜形成が可能(数十μm~数mm)
・金属、合金、セラミックス、プラスチックなど多様な材料に対応

溶射加工には主に「フレーム溶射」、「プラズマ溶射」、「電気アーク溶射」と3つの種類があります。それぞれの溶射とその特徴、メリット・デメリットをご紹介します。

フレーム溶射

フレーム溶射の特徴

フレーム溶射は、燃焼炎を熱源として溶射材料を溶融し、圧縮空気で基材に吹き付ける溶射法です。比較的低コストで設備も簡易なため、幅広い産業で利用されています。

特徴
熱源:酸素と燃料ガス(アセチレン、プロパンなど)を燃焼させて高温炎を生成。
材料形態:主にワイヤや粉末を使用。
皮膜特性:やや多孔質で、密着性はプラズマ溶射やHVOFより劣る。
基材の熱影響:比較的少ない。

流れ
酸素と燃料ガスを混合し、燃焼炎を発生。
→溶射材料(ワイヤまたは粉末)を炎中で溶融。
→圧縮空気で溶融粒子を基材に吹き付け、皮膜を形成。

フレーム溶射のメリット・デメリット

フレーム溶射のメリットは、設備が比較的安価で、施工速度が速く、大面積や現場補修に適している点です。また、燃料と酸素を用いるため電力不要で、取り扱いが容易です。
デメリットは、溶射温度が低いため皮膜の密着性や強度がプラズマ溶射に比べ劣り、酸化や気孔が多くなる傾向があること、さらに高精度や高耐久性が求められる部品には不向きな点です。

メリット
・設備が簡易で低コスト。
・現場施工が可能。
・比較的厚膜形成が容易。

デメリット
・皮膜が多孔質で密着性が低い。
・耐熱性や耐腐食性はプラズマ溶射に劣る。
・高精度な要求には不向き。

プラズマ溶射

プラズマ溶射の特徴

プラズマ溶射は、金属やセラミックなどの粉末材料を高温のプラズマジェットで溶融し、基材表面に高速で吹き付けて皮膜を形成する表面処理技術です。耐摩耗性、耐熱性、耐食性を向上させるために用いられ、航空宇宙、発電、化学装置など幅広い分野で利用されています。高温で材料を溶融するため、密着性や皮膜品質が高く、複雑形状にも適用可能です。

特徴
高融点材料対応:酸化アルミニウム、ジルコニア、タングステンなど。
皮膜特性:高密着性、耐熱・耐摩耗・耐腐食性に優れる。
膜厚:数百μm~数mm

流れ
プラズマガス供給:アルゴン、窒素、ヘリウムなどのガスを電極間でイオン化し、プラズマ状態にします。
プラズマジェット形成:電気エネルギーでガスを加熱し、超高温のプラズマジェットを生成。
材料供給:粉末材料をプラズマジェットに投入し溶融。
基材への吹き付け:溶融粒子が基材に衝突し、急冷固化して皮膜を形成。

プラズマ溶射のメリット・デメリット

プラズマ溶射のメリットは、耐摩耗性・耐食性・耐熱性を大幅に向上でき、基材の寿命延長や機能追加が可能な点です。また、複雑形状にも適用でき、幅広い材料を使用できます。
デメリットは、設備が高価でエネルギー消費が大きく、施工時に高温・高電力が必要なため安全管理が重要なこと、さらに皮膜の内部応力や密着性に課題が生じる場合がある点です。

メリット
・高融点材料の溶射が可能。
・厚膜形成(数百μm~数mm)。
・耐熱・耐摩耗・耐腐食性に優れる。

デメリット
・設備が高価。
・操作が複雑で熟練技術が必要。
・コストが高い。

電気アーク溶射

電気アーク溶射の特徴

電気アーク溶射は、2本の金属ワイヤを電極としてアーク放電を発生させ、その熱でワイヤを溶融し、圧縮空気で基材に吹き付ける溶射法です。主に金属系材料のコーティングに使われます。

特徴
熱源:電気アーク(約4000℃程度)
材料形態:ワイヤのみ(粉末は不可)
皮膜特性:比較的多孔質だが、耐摩耗・耐腐食性を付与可能
基材の熱影響:少ない(低温プロセス)

流れ
2本の金属ワイヤを電極としてセット。
→ワイヤ先端でアーク放電を発生し、ワイヤを溶融。
→圧縮空気で溶融粒子を基材に吹き付け、皮膜を形成。

電気アーク溶射のメリット・デメリット

電気アーク溶射のメリットは、設備が比較的安価で施工速度が速く、大面積や現場補修に適している点です。また、電力のみで動作し、燃料不要でランニングコストが低いことも利点です。
デメリットは、溶射温度が低く酸化や気孔が多くなるため皮膜品質がプラズマ溶射に劣り、耐久性や密着性に課題があること、さらに精密部品には不向きな点です。

メリット
・設備が比較的安価
・高速施工が可能
・現場施工に適している

デメリット
・材料はワイヤのみ
・皮膜がやや多孔質で密着性はプラズマ溶射より劣る
・セラミックスなど高融点材料は不可

3種類の溶射法の比較のまとめ

3種類の溶射法は、目的やコストに応じて使い分けられます。プラズマ溶射は非常に高温で高品質な皮膜を形成でき、耐摩耗・耐熱性に優れますが、設備が高価でエネルギー消費が大きい点が課題です。
フレーム溶射は設備が安価で現場施工に適しますが、酸化や気孔が多く密着性に劣ります。
電気アーク溶射は施工速度が速く低コストですが、皮膜品質は中程度で精密部品には不向きです。
用途に応じた選択が重要です。

当社の溶射について

トクセンエンジニアリングではフレーム溶射とプラズマ溶射を実施しています。
フレーム溶射は半導体スライス工程で用いられるメインローラーのテーパー勘合部に用いられており、このテーパー部の勘合精度によりスライス時の精度が決まる為、メインローラーの品質を決める大きな役割を果たしています。
またプラズマ溶射は各種ローラーキャプスタンの表面に行われています。耐摩耗性の高い金属を溶射することでキャプスタンの寿命を大きく伸ばすことが可能です。

半導体製造装置や精密機械では、わずかな表面状態の違いが性能に直結します。
当社では、勘合精度や耐摩耗性を重視した溶射加工により、装置性能の安定化に貢献しています。
溶射仕様の見直しや新規開発に関するご相談は、ぜひお問い合わせページよりご連絡ください。

担当事業部
トクセンエンジニアリング株式会社