伸線加工の老舗が挑む微細技術―極細線で切り拓くワイヤープローブの未来―

2026.04.01

技術コラム

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伸線加工の老舗が挑む微細技術―極細線で切り拓くワイヤープローブの未来―

電子部品の微細な接点に接触し、導通検査を行うための部品であるワイヤープローブ。幅広い検査工程で用いられ、微細化が急速に進んでいます。
その製造工程や用いられる材料、プローブピンとの違いまでを本記事でご紹介します。

ワイヤープローブって何?

ワイヤープローブは、極細の金属線を用いて電子部品の微細な接点に接触し、導通検査を行うための部品です。
一般的には、直径30μm〜200μm程度の金属線(タングステン、レニウムタングステン、粉末ハイス、パラジウム系合金など)が使用され、伸線加工によって高精度に成形されます。
さらに、導電性メッキ(銀、金など)や絶縁コーティング(ポリイミド、ポリアミドイミドなど)を施すことで、信号の安定性と隣接線との絶縁性を確保して使用します。
製造工程では、ダイスによる伸線加工後、熱処理や表面処理を行い真直性、表面状態が厳しく管理されます。用途は、半導体パッケージ(COF、FPC)、プリント基板、精密センサー、医療機器、などの検査工程に広く用いられ、特に微細化が進む電子機器においては、信頼性の高い検査を実現するために欠かせない技術となっています。

画像はイメージです。

プローブピンとワイヤープローブの違いは?

プローブピンとワイヤープローブは、電子部品の導通検査に使用される部品ですが、構造・製造方法・用途に明確な違いがあります。

プローブピンは、硬質金属(パラジウム合金、レニウムタングステン、ベリリウム銅など)を、直径70μm~200μmの棒状に加工した部品で、精密切削や研磨、熱処理によって高硬度・高靭性・高真直性を実現します。
主にICパッケージ、コネクタ、プリント基板など、比較的大型で接点が明確な部品の検査に使用され、ピン先端のテーパ形状やばね構造によって安定した接触と高い耐久性を確保します。
一方、ワイヤープローブは、直径30μm〜200μmの極細金属線を用いた柔軟性のある検査部品で、伸線加工と絶縁・導電性コーティングを施すことで微細な接点への対応力を高めています。
COF・FPCパッケージ、MEMS、精密センサー、医療用微小デバイスなど、微細化・高密度化が進む部品の検査に適しており、柔軟性と微細対応力が求められる場面で活用されます。
つまり、プローブピンは半導体端子の検査に、ワイヤプローブは基板検査に使用されています。

極細ワイヤープローブの工程

極細ワイヤープローブができるまでの工程を6つに分けてご紹介します。

① 母材の準備(Material)
最初は直径0.2〜1.0mm程度の金属線を使用。
この線材は、耐摩耗性・導電性・強度・加工性を考慮して選ばれます。

② 多段階の伸線加工(Wire Drawing)
線材を『ダイス(穴の開いた金型)』に通して、少しずつ細くしていきます。
一度に細くすると断線するため、数十段階に分けて徐々に径を減らすのがポイントです。
例:1.0mm → 0.5mm → 0.2mm → 0.1mm → 0.03mm(30μm)
伸線加工の際はダイスと金属とのメタルタッチを防ぐために潤滑剤を使用します。

③ 中間焼鈍(Annealing)
加工中に金属が硬化して割れやすくなるため、途中で熱処理(焼鈍)を行い、柔らかさを回復させます。これにより、次の伸線工程でも安定して加工が可能になります。
ワイヤの強度や硬さを維持、向上させるのに、この中間焼鈍がノウハウになってきます。

④ 切断加工(High-precision cutting)
長尺の金属線を数mm~数十mmの長さに高精度で切断します。切断面のバリや変形を防ぐため、専用の微細切断装置を使用します。
最近では長さ精度が十数μmの要求もあります。

⑤ 先端研磨・整形(High-precision tip polishing)
接触精度を高めるため、先端を研磨加工します。
研磨方法としては色々な方法がありますが、安定した接触・低接触抵抗・微細端子対応のために下記を実施します。
機械研磨:砥石や研磨布で物理的に整形。
電解研磨:電気化学的に表面を滑らかに。
レーザー加工:非接触で微細形状を形成。

⑥ 表面処理・絶縁加工(Surface treatment・Insulation processing)
金・銀メッキで導電性や耐腐食性を向上。
中間部にポリアミドイミドなどの絶縁コーティングを施す場合もあります。 最後に外観や真直性、寸法などの検査を経てお客様に出荷されます。

トクセン工業のワイヤープローブの特徴と材料

独自の端面加工技術により、滑らかな表面状態でバリなし端面形状を実現し、先端の加工性のよいワイヤプローブを提供します。
また、トクセン工業独自の伸線・熱処理技術により、真直性に優れ、高硬度、高靭性のワイヤープローブに仕上げています。
そのため、優れた耐摩耗性を持ち、過酷な荷重条件でも折れにくい、強靭なワイヤープローブが特徴です。

■ 粉末ハイス鋼(Powder High-Speed Steel)
粉末ハイス鋼は、粉末冶金法によって製造される高速度工具鋼で、均一な微細組織を持ち、偏析が少ないのが特徴です。
高い硬度と耐摩耗性を持ちながら、靭性にも優れており、衝撃や曲げに対しても強い材料です。さらに、高温下でも硬度を維持する「赤熱硬さ」があり、切削工具や金型部品、ドットピンなどの耐久性が求められる用途に広く使用されます。

ワイヤープローブは、電子部品の微細化が進むほどに重要性が増す領域であり、その性能は検査精度や製品の信頼性に直結します。

トクセン工業では、長年培ってきた伸線技術や熱処理技術を基盤に、極細でありながら高い強度と真直性を備えたワイヤープローブを安定して供給できる体制を整えています。
今後も電子デバイスのさらなる高密度化が進む中で、ワイヤープローブに求められる役割はますます大きくなり、その技術開発は止まることなく進化していきます。

担当事業部
機能材料事業部