ピストンリング品質を支えるオイルテンパー

2026.04.01

技術コラム

  • #オイルテンパー
  • #熱処理加工

ピストンリング品質を支えるオイルテンパー

エンジン部品に代表される高負荷環境下で使用される鋼線には、「強さ」だけでなく「しなやかさ」や「耐久性」が求められます。
こうした相反する特性をどのように両立させるか。その鍵を握るのが、オイルテンパー工程です。

オイルテンパーとは?

オイルテンパー工程とは、鋼線を高温で加熱した後、急速に冷却(焼入れ)することで、非常に高い硬度を得る熱処理方法です。
この焼入れによって鋼線は硬くなりますが、その反面、非常に脆くなり、衝撃や曲げに弱くなります。そのため、焼入れ直後の状態では、ピストンリングなどの耐久性が求められる部品には適していません。
そこで、焼入れ後に焼戻しという工程を行います。焼戻しによって、鋼線は高い強度を維持しながら、靭性(しなやかさ)を回復し、さらに疲労に対する耐性も向上します。
これにより、オイルテンパー処理された鋼線は、耐久性と強度のバランスが取れた材料として、自動車部品などの過酷な使用環境に適した性能を発揮します。

なぜオイルテンパー工程が必要なのか

ピストンリングは、エンジン内部の高温・高圧という過酷な環境で使用されるため、優れた耐摩耗性と高い疲労強度が求められます。
これを実現するために、鋼線にオイルテンパー処理を施し、適切な硬度と靭性を付与します。硬度によって摩耗に強くなり、靭性によって衝撃や繰り返し応力に耐えられるようになります。
さらに、オイルテンパー処理を行うことで鋼線の真直性(まっすぐさ)が向上します。
この特性は、ピストンリングとして加工された際に、エンジン燃焼室内での気密性を高める重要な要素となります。気密性が向上することで、燃焼効率やエンジン性能の安定性にも寄与します。

ピストンリング線の拡大写真

オイルテンパーの基本工程

オイルテンパーは、①加熱→②急冷(焼入れ)→③焼戻し(テンパリング)の順で処理されます。

①加熱
鋼材を所定の温度(通常はオーステナイト化温度、約800~900℃)まで加熱します。この段階で組織はオーステナイト組織に変化します。

②急冷(焼入れ)
加熱後、鋼材を油槽に浸漬し急冷します。この時に水ではなく油を使用することで、割れや歪みを低減します。この工程ではオーステナイト組織がマルテンサイト組織へと変化し、非常に硬くなります。

③焼戻し(テンパリング)
焼入れ後は硬くて脆いので、再度加熱し靭性を回復させます。焼戻し温度は通常150~650℃程度で目的に応じて調整し、内部応力を緩和し適切な硬度と靭性を得ます。

オイルテンパー処理は、単に硬くするための工程ではなく、強度と靭性の最適なバランスを設計するための重要な熱処理技術です。用途や使用環境に応じて、焼入れ条件や焼戻し温度の選定が性能を大きく左右します。

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