高強度化を実現する湿式伸線技術

2026.04.01

技術コラム

  • #中物伸線
  • #伸線加工

高強度化を実現する湿式伸線技術

近年、PHEVやEVの普及が急速に進んでいます。これらの車両は大容量バッテリーを搭載するため、従来の内燃機関車と比較して車両重量が重くなる傾向があります。
そのため、自動車メーカー各社では車両全体の軽量化に積極的に取り組んでおり、アルミ合金フレームの採用や超高張力鋼板の活用など、強度を維持しながら質量を抑える設計が進められています。
当然のことながら、タイヤも軽量化の重要な対象です。

タイヤに使用されるスチールコードとビードワイヤ

乗用車やトラック・バスなどのタイヤには、内部補強材としてワイヤが使用されています。
スチールコード:地面との接地面付近
ビードワイヤ:ホイールとのリム部

一般的な使用量の目安は以下の通りです。

乗用車用タイヤ
スチールコード:約1kg
ビードワイヤ:約0.5kg
合計:約1.5kg

トラック・バス用タイヤ
スチールコード:約8kg
ビードワイヤ:約2kg
合計:約10kg

タイヤ内部には、相当量のワイヤが使用されていることがわかります。

なぜ「タイヤの軽量化」が重要なのか

タイヤ重量を軽減することは、エンジン車なら燃費向上、EV車なら電費向上(航続距離向上)に直結します。

さらに重要なのが「ばね下重量」です。
ばね下重量(サスペンション・ブレーキ・ホイール・タイヤなど)は、車両の走行性能や操縦安定性に大きな影響を与えます。
一般に、「ばね下重量1kgの軽量化は、ばね上5kg以上の軽量化効果に相当する」と言われています。
つまり、タイヤ軽量化は単なる省エネ対策ではなく、走行性能そのものを向上させる重要な技術課題なのです。

軽量化を実現する鍵

しかし、タイヤは高い剛性と耐久性を維持する必要があります。
単純に材料を減らすだけでは、安全性や性能を損なってしまいます。

そのため現在は、ワイヤ1本あたりの強度を高め、使用量を減らすという方向に技術開発が進んでいます。
ワイヤの高強度化には、熱処理工程での組織制御・材料設計・加工条件の最適化など、複数の技術要素が関わります。
その中でも最も重要な工程が「湿式伸線工程」です。

湿式伸線工程の高度化が生む高強度ワイヤ

ワイヤを細く加工する伸線工程では、次のような要素が品質を左右します。
・ダイス形状の最適設計
・ダイス材料の選定
・材料特性に基づく総減面率の設計
・適正な潤滑液管理

特に、湿式伸線に使用する潤滑液の温度管理は、強度・表面品質・安定生産に直結する重要なポイントです。
トクセン工業では、潤滑液温度を一定に保つための緻密なコントロールを実施し、安定した高強度ワイヤの製造を実現しています。
この工程制御の精度こそが、軽量化と強度維持を両立させる基盤技術となっています。

EV時代を支える基盤技術として……

車両の電動化が進む中、タイヤ内部のワイヤ技術はますます高度化が求められています。
軽量化・高強度化・安定供給・・・これらを実現するためには、単なる材料提供ではなく、加工技術・工程管理・品質保証までを一体で考えることが重要です。
私たちは、EV・PHEV時代の進化を足元から支える技術パートナーであり続けたいと考えています。

タイヤ用ワイヤの高強度化や軽量化に関するご相談、湿式伸線工程の最適化、ダイス設計に関する技術課題などがございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
用途や目標特性に応じた最適なご提案をいたします。
技術的なご相談・共同開発のご相談も歓迎しております。

担当事業部
タイヤ用線事業部